2020/05/19 遺言・相続
判例解説|相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するとした判例(最判昭和34年6月19日・貸金請求事件)
判決の要旨
「連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付につき各独立に全部の給付をなすべき債務を負担しているのであり、各債務は債権の確保及び満足という共同の目的を達する手段として相互に関連結合しているが、なお、可分なること通常の金銭債務と同様である。ところで、債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきであるから(大審院昭和五年(ク)第一二三六号、同年一二月四日決定、民集九巻一一一八頁、最高裁昭和二七年(オ)第一一一九号、同二九年四月八日第一小法廷判決、民集八巻八一九頁参照)、連帯債務者の一人が死亡した場合においても、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当である。」
注意点
一般的に、遺産分割協議の際、
誰が相続債務を負担するのかについて合意をすることがあります。
しかし、上記判例のとおり、金銭債務などの不可分債務については、
法律上当然に分割されて、各相続人が相続分に応じて承継しています。
つまり、相続人間で、誰が相続債務を負担するのかについて合意をすること自体は有効ですが、
そのことを債権者に対して対抗することは出来ず、
各相続人は相続分に応じて相続債務を承継することになります。
もし、相続人間の合意だけで相続債務の帰属を自由に決められるとすると、
支払能力のない相続人に相続債務が押し付けられてしまい、
債権者による債権回収は困難となってしまうからです。
また、そもそも、遺産分割協議は、不動産・動産・預貯金などの積極財産を対象としており、
相続債務(消極財産)は遺産分割の対象ではありません。
あくまでも、最終的に相続人の内の誰が相続債務を負担するのかについて、
相続人間で合意したもの過ぎないことを理解する必要があります。
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