2019/04/22 その他

超高齢社会と弁護士業務のあり方

4月20日の日経新聞朝刊に、

 

「75歳以上世帯が4分の1  2040年推計 単身は500万人超 介護・年金変革迫る」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190420&ng=DGKKZO43965140Z10C19A4MM8000

 

「単身の高齢者、都市部でも増加 40年推計、東京・大阪45%超 生活の支え、整備急務」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190420&ng=DGKKZO43965080Z10C19A4EA4000

 

という記事が掲載されていました。

 

国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計では、今から約20年後の2040年における全世帯における高齢世帯(世帯主が65歳以上)の割合は、全国平均で44.2%(2015年時点では36%)、東京都でも36.3%(2015年時点で29.1%)とのことです。

 

また、高齢世帯の内、単身世帯の割合は、2040年時点で、全国平均では、40%、東京都ではなんと、45.8%と予測されています。ざっくり言うと、20年後は、全国平均で約2件に1件が高齢世帯になり、その内、約2件に1件が単身者ということになります。

 

ちなみに、河合雅司著「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」 (講談社現代新書)では、
「2040年頃に向けて死亡数が激増し、火葬場不足に陥ると予測され、高齢者数がピークを迎える2042年頃には、無年金・低年金の貧しく身寄りのない高齢者が街に溢れかえり、生活保護受給者が激増して国家財政がパンクするのではと心配される。」

 

とされています。これを読んだときは、衝撃でした。
(まだ読んでいない方には是非お勧めします。)

 

人口問題は、予測が可能な数少ない問題であるため、高齢世帯数などは、上記の予想どおりになるはずです。

 

この社会の変化は、弁護士業務のあり方も大きく変えるはずです。

 

遺産分割・遺留分減殺・相続放棄・遺言などの相続問題、任意後見・法定後見などの認知症対策、信託、会社の後継者問題(いわゆる事業承継対策)などの案件が増えるのはもちろんですが、このような取扱業務の話ではなく、もっと、根本的な部分で弁護士業務のあり方に大きな変化が生じるだろうと考えています。

 

現在、多くの弁護士は、ご相談者からの問い合わせを待ち、法律相談の予約が入ったら、事務所に来ていただき、面談で法律相談を行う。依頼を受けた後も、面談は事務所で行うというやり方を取っていることがほとんどだと思います。

 

基本的にあらゆる面で受け身のスタイルです。

 

ベンチャー企業支援などを中心とする弁護士は、チャットワークやスカイプその他のテクノロジーを用いて、直接面談をすることなく、いつでもどこでも相談に乗るという方法を取っていますが、それは少数派です。

 

しかし、今後は、普通の一般的な弁護士(いわゆる街弁)の相談者・依頼者こそ事務所での打ち合わせが困難になり、外出することなく法律相談したいというニーズが高まるように思います。また、社会から孤立しがちな人が増える可能性があり、そもそも法律相談にたどり着かない人も増えるように思います。

 

2040年頃の社会の状況を踏まえると、金銭面や人間関係でのトラブルが増え、相談件数が増えるように思う一方で、従来通りの弁護士業務の進め方では、相談件数が減る一方になってしまうのではないかとも考えています。

 

それでは、救われるべき人が救われない社会、紛争の予防がされないために紛争が生じやすい社会になってしまいます。また、弁護士に対する期待も信頼もなくなり、弁護士業が成り立たなくなる可能性もあります。

 

その他でも、今後は、ますます分かりやすい法律相談が求められるはずです。
ただでさえ、弁護士は難しい用語を使って説明が分かりづらいと批判されている状況にあります。高齢者にも分かりやすい説明が出来るように工夫をしていくことは、真剣にかつ早急に取り組むべき問題です。

 

他の産業では、従来からある訪問診療・介護だけでなく、移動スーパー、オンライン診療などがどんどん導入され始めています。考えなくても当たり前のことですが、弁護士だけ従来の仕事の進め方でやっていけるはずはありません。

 

私は、以前から、「法律を分かりやすく説明する」ことを心掛けていますので、高齢者にも分かりやすいように、より一層磨きをかけていくのはもちろん、それだけでなく、今後は超高齢社会における弁護士業務のあり方を根本から見直していきたいと考えています。

 

 

白土文也