2019/06/27 その他 その他の法律情報

事務所内勉強会(使用貸借契約の終了について)

先日の事務所内勉強会では、

 

判例タイムズ2018年8月号掲載の

「民法597条に基づく使用貸借契約の終了 ~親族間の不動産の使用貸借契約を念頭に~」

 

を題材にして意見交換を行いました。

 

まず、この論文についてですが、筆者の考える判断の枠組みと判断の枠組みを使う際の注意点まで丁寧に解説してあり、日々の実務において非常に参考になるというのが当事務所の弁護士3名の一致した見解でした。

 

使用貸借とは、無償で使用収益した後に返還することを約束して、物を受け取ることで成立する契約です。

 

使用貸借においては、親族間など一定の関係がある当事者間で、土地や建物を使用させること自体の(黙示的な)合意があって、使用貸借が始まったものの、明確な期限や使用収益の目的を定めることはしなかった。そして、長期間経過した頃には、当初の人的関係が全く異なる状況に至ったというケースも珍しくありません。

 

使用貸借契約が終了しているのか否かが問題になるのは、まさにこのようなケースであり、最高裁昭和45年10月16日判決と最高裁平成11年2月25日判決において判断が示されています。

 

このようなケースにおいては、期限の定めも使用収益の目的の定めもないとして民法597条3項に基づいて使用貸借契約を終了させてしまうのではなく、上記最高裁判例が示した判断の枠組みを用いて(根拠条文は民法597条2項ただし書)、かつ、そこで示された考慮要素(経過した年月、無償で貸借されるに至った特殊な事情、当事者間の人的つながりなど)を詳細に認定して判断をすべきというのがこの論文のポイントです。

 

当事務所においては、現在、使用貸借契約の終了が問題になるケースが3件あり、上記の最高裁平成11年判決の判断枠組みを用いて検討することにしましたが、議論が盛り上がり、2つのケースを検討するだけで2時間弱費やしてしまい、そこで勉強会を終えることにしました。

 

目の前の実務に全力を尽くすのは当然ですが、判例評釈や論文の読むことを怠らないようにしていきたいと思っております。

 

 

白土文也