2020/12/24 その他の法律情報

共有物分割請求とは?

 

不動産が共有になっていることは珍しくありませんが、共有が原因で不動産が活用できないなど様々な問題があり、根本的に解決するには共有状態を解消する必要があります。

共有物分割請求とは、他の共有者に対し共有物を分割するよう意思表示することであり、共有状態を解消するための方法です。

 

不動産の共有状態の問題点

 

建物を共有する場合、建物の建て替えや増改築等は原則として共有者全員の同意がなければできません。

また、修繕工事は通常、管理にあたり、原則として持分の価格の過半数で決めなければできません。このように、変更や管理の制限という問題があります。

そして、不動産が共有のままだと、例えば共有者の一人が死亡した場合、相続人の数だけ共有者が増えてしまう等、権利関係が複雑になりがちなことも問題点といえます。

普段は上記問題点が表面化しにくいため、つい共有状態を放置してしまいがちですが、共有者間が不仲になる、共有者の一人が死亡する等して問題が表面化した場合、対応が難しくなることがあります。

共有状態はできる限り解消しておくのが望ましいと言えます。

 

 共有物分割手続きの流れと種類

 共有物分割請求後の手続きの流れと種類は次のとおりです。

 

(1) 共有物分割協議

まず、共有者間で分割方法について合意できないか協議を試みます。不動産は共有者間の利害が大きく対立することも多く、合意に至らないことも多いです。しかし、合意に至らなかったとしても充実した分割協議を試み、分割協議がまとまらない理由をできる限り明らかにしておくことが、分割協議がまとまらなかった後の手続きを進める上でも重要です。

 

(2) 共有物分割請求訴訟

共有者間の協議による解決ができない場合に、訴訟を提起し、裁判所の審理を受ける方法です。審理の際、裁判所から勧められて和解協議を行うことが多く、和解ができない場合には判決で共有物の分割方法について裁判所の判断が下されます。

 

(3) 共有物分割調停

また、共有物分割調停という手続きもあります。共有物分割調停とは、裁判所において、訴訟ではなく共有者間の協議により共有状態を解消する方法です。

いきなり訴訟を提起するのではなく、共有物分割調停での解決を目指すという選択肢もあります。

 

 

共有物分割方法の3つのパターン

共有物分割の方法には次の3つのパターンがあります。

 

①現物分割

共有物の現物を分割する方法です。

例えば、AとBが共有する土地を半分に分け(分筆)、半分に分けた土地をそれぞれAとBが単独で所有する場合です。

 

②価格賠償

共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法です。

例えば、AとBが共有する土地の全部をAの単独所有とし、その代わりにAがBに持分に相当する金銭を支払う場合です。

 

③換価分割

共有不動産を第三者に売却し売却代金を共有者で分割する方法です。

例えば、AとBが共有する土地をまとめて売却し、得た金銭をAとBで持分に応じて分ける場合です。

 

分割方法の選択について

共有者間の合意で解決する場合はどの方法で分割しても自由です。

一方、訴訟で解決する場合は分割方法の優劣関係について民法に次の通りに定められています。

 

第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。

一 共有物の現物を分割する方法

二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

 

つまり、現物分割や価格賠償では共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときに限り、競売による換価分割が選ばれることになります。

 

共有物分割請求訴訟の注意点

 

共有物分割請求訴訟は、裁判所が分割方法について裁量で判断するため、裁判所は当事者の主張を考慮しますが、必ずしも当事者の主張する分割方法とならない場合があることに注意が必要です。

例えば、 AとBが土地を共有していた場合に、AとBがお互いに自分が土地の全部を取得すべきと主張する場合でも、裁判所はAとBのどちらかが土地の全部を取得するという判断をせず、土地を全部売却し、売却代金をAとBで分けるといった判断をする可能性があります。

 

 遺産共有と物権共有について

 

共有には遺産分割未了の遺産の共有状態(遺産共有)と遺産共有以外の共有状態(物権共有)があります。

民法では、遺産共有と共有物分割請求訴訟の関係について、次のとおりに定められています。

 

第二百五十八条 

共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

 

第二百五十八条の二

共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

 

 つまり、原則として遺産共有を共有物分割請求訴訟で解消することはできず、遺産共有は遺産分割、物権共有は共有物分割請求訴訟でそれぞれ共有状態を解消することになります。

 

 

具体例を示して、遺産共有と物権共有が併存した場合の流れについて説明します。

A、B、Cの3名がそれぞれ持分を3分の1として土地を共有していたところ、Cが死亡し、Cの子C1、C2がCの相続人になった場合を考えてみます。

この場合、C1、C2がそれぞれ有する6分の1の持分は遺産分割未了の遺産ですから、遺産共有となっています。

 

原則として、遺産共有を共有物分割請求訴訟で解消することはできないため、遺産共有と物権共有を裁判上解消する手段 としては以下の通りになります。

まず、共有物分割訴訟でA、BとCの相続人達の間の物権共有を解消し、次に、この共有物分割訴訟でCの相続人達に分与された財産は遺産共有状態になっているため、遺産分割によって遺産共有を解消することになります。

例えば、共有物分割訴訟において裁判所がCの相続人達がAとBの持分をすべてを買い取る価格賠償の方法を採用したとすると、Cの相続人達(C1、C2)に持分の買取代金の支払債務を負担させ、C1、C2にA、Bの持分を取得させる形で物権共有が解消されます。この場合、C1、C2はそれぞれ法定相続分に基づき2分の1ずつ持分を有する遺産共有状態 になります。C1、C2は遺産分割により、当該土地の遺産共有を解消することができます。

別の例として 、共有物分割訴訟において、裁判所が物権共有を解消するため、AがBとCの相続人達(C1、C2)の持分すべてを買い取る価格賠償の方法を採用したとすると、Aに買取代金の支払債務を負担させ、Aにその他の共有者の持分を取得させる形で物権共有が解消されます。

買取代金のうち、Cの相続人達が有していた持分(2人合計して3分の1)に応じた金銭をC1、C2Cが取得することになり、遺産共有の状態 になります。C1、C2は当該金銭を含めた遺産について遺産分割手続きを進めていくことになります。

 

まとめ

これまで見てきたように、共有状態はできる限り解消しておくべきですが、分割方法には種類があり、遺産共有や物権共有といった専門的な概念もあります。充実した分割協議を行うためにも早期に弁護士に相談することをお勧めします。

 

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