2020/12/24 その他の法律情報
現物分割とは?現物分割の具体例と認められないケース
(注)このページは、遺産分割における現物分割ではなく、共有物分割における現物分割について解説しています。
現物分割とは、共有物の現物を分割する方法です。以下では、具体例を紹介しております。
土地の現物分割の具体例
① 分筆
分筆とは、一つの土地を複数の土地に分けて登記することを言います。
分筆登記には分筆後の土地に関する地積測量図の他、筆界確認書、道路境界確定証明書等が必要となり、土地の境界を確定する測量を行う必要があります。
分筆 による現物分割の具体例としては、
土地をA(持分3分の2)とB(持分3分の1)が共有している場合に土地を2000万円の土地1、1000万円の土地2に分筆し、土地1をAに、土地2をBの単独所有とする場合などが考えられます。
土地の面積ではなく評価額を基準に持分に応じた割合で分けることに注意が必要です。
また、分筆は測量や資料収集等に時間や費用がかかること、分筆することで土地の価値が下がる可能性があること等にも注意が必要です。
② 分筆と価格賠償とのセット
分筆後の土地の評価額が持分に応じた金額になれば良いですが、実際には過不足が生じることが多いのが実情です。
過不足が生じる場合には、持分を超える評価額の土地を取得する者が、他の共有者に対して、超えた分の対価を支払う(価格賠償といいます)ことで調整します。
例えば 、土地をA(持分3分の2)とB(持分3分の1)が共有している場合に、Aが取得する土地の評価額が2500万円、Bが取得する土地の評価額が500万円だった場合、AがBに対し、500万円を支払い調整します。
③多数の土地について各土地を各共有者の単独所有とする
多数の土地を分割対象とし、各土地を各共有者の単独所有とすることも可能です。
具体例 としては、
それぞれ評価額が1000万円の土地1、土地2、土地3があり、ABCがそれぞれ持分3分の1ずつ共有している場合、土地1をA、土地2をB、土地3をCの単独所有とする場合などが考えられます。
価格賠償とセットにすることもできます。
④共有関係の一部を解消
土地をA、B、Cが共有している場合に、Aだけ共有関係を解消することも可能です。
具体的には 、
土地をABCが持分3分の1ずつで共有している場合に、2000万円の土地の1と、1000万円の土地2に分筆し、土地1をBCの共有にし、土地2をAの単独所有とする場合などです。
現物分割が認められない場合
共有物分割請求訴訟において現物分割が認められない場合は民法に次のとおりに定められています。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条
前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
①分割することができないとき、②価格を著しく減少させるおそれがあるときについて具体的なケースを見ていきましょう。
土地の現物分割が認められない具体的なケース
①分割することができないとき
次のような事情があると、分割することができないときにあたります。
・隣地との境界が不明確で確定に時間がかかる場合
・測量ができない場合
②価格を著しく減少させるおそれがあるとき
次のような事情があると、価格を著しく減少させるおそれがあると判断されやすいです。
・分割後の土地が狭い、形が不整形である場合
・土地上に建物がある場合
・分割後の土地が建築基準法上の接道義務を充たさない 場合
しかし、最終的には土地が存在する場所や、隣接している土地を一体とみることができるか 、建物を取り壊さなくても価格を著しく減少させずに分割できるか、建物を取り壊すことになっても特に問題ないか等の様々な点について個別具体的な事情を考慮して判断する必要があり、土地の現物分割が認められるかどうかについて十分な検討が必要です。
まとめ
よりよい共有物分割をするには、現物分割の協議をする前に訴訟で現物分割が認められる見通しがどの程度あるか、どの方法で現物分割をしたいか、全面的価格賠償と比べてどうかといった点を弁護士と一緒に充分に検討する必要があります。
共有物を分割することになった際には、ぜひ一度弁護士までご相談ください。
記事監修者:弁護士白土文也
不動産(共有不動産・共有物分割/借地権/賃貸借/売買・任意売却/不動産の相続対策/不動産の家族信託)
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